はじめに
CIO(最高情報責任者)の仕事は、もはやIT部門の最適化だけではありません。経営戦略を支える存在として、組織変革の中核を担うことが求められています。
しかし、どれほど優れた施策を構想しても、それを「伝え、理解され、実行に移させる」力がなければ意味を成しません。
本記事では、CIOの成果を左右する「伝える力」の本質と、経営層・現場の両方に届くコミュニケーション技術、明日から実践できる習慣までを解説します。
目次
- CIOの役割は“伝える人”へと進化している
- 「伝わる戦略」なくして、CIOの構想は実行されない
- ITを“経営言語”に変える「翻訳力」
- 経営層・現場で異なる“刺さる伝え方”とは
- CIOが習得すべき、3つの伝達スキル
- 実践チェックリスト:「伝える力」を高める習慣
- まとめ:伝える力はCIOの“最大の武器”である
1. CIOの役割は“伝える人”へと進化している
かつてのCIOは、IT資産やシステムインフラの整備に責任を持つ“縁の下の力持ち”でした。しかし今や、テクノロジーは経営の最前線にあり、CIOは変革の起点に立つリーダーとなりました。
その役割の本質は、「情報を戦略に変える」ことにあります。ここで鍵を握るのが、“誰に、何を、どう伝えるか”。ITの専門性だけでは、経営に橋渡しすることはできません。言葉にして伝え、共感を生み、実行につなげる力。それがCIOの役割を根底から支えます。
「伝える」という行為は、単なる報告や説明ではなく、経営を動かす“対話”であるという視点が、これからのCIOに求められるのです。
2. 「伝わる戦略」なくして、CIOの構想は実行されない
CIOが描く構想や戦略は、しばしば現場や経営層に“響かない”という課題に直面します。その原因の多くは、内容の優劣ではなく「伝え方」にあります。
構想は優れていても、「なぜ今それが必要か」「どんな成果が期待できるか」「誰にどんな変化が訪れるか」が明確に伝わらなければ、理解も納得も得られません。
さらに現場は、目の前の業務に直結しない話には反応しづらく、経営層はROIやリスクに敏感です。伝える際には、“相手の関心に沿ったストーリー”で語る必要があります。技術的正しさだけでは動かない──それが組織というものです。
CIOに必要なのは、「伝わる前提で構想する」ことです。設計の段階から、誰にどう伝えるかを組み込む。それが、構想を実行に変える第一歩です。
3. ITを“経営言語”に変える「翻訳力」
テクノロジーと経営には、言語の違いがあります。たとえば「ゼロトラスト」と言っても、聞き手にとっては「コストのかかるセキュリティ強化策」に映るだけかもしれません。
そこで必要なのが、“翻訳力”。ITの専門語を、経営課題や事業インパクトに変換して語る力です。
例:
× 技術言語で伝える:
「ゼロトラスト導入により、内部アクセスを逐次検証します」
○ 経営言語で伝える:
「テレワークや外部連携が進んでも、情報漏えいリスクを抑え、監査対応の負担を軽減できます」
このように、“成果”や“痛みの回避”で語ることで、相手に届く説明ができます。翻訳とは、言葉を変えることではなく、“意味の再構築”なのです。
4. 経営層・現場で異なる“刺さる伝え方”とは
伝える相手によって、刺さるポイントは大きく異なります。経営層には「戦略性」「収益性」「競争優位性」、現場には「業務改善」「負担軽減」「使いやすさ」といった切り口が響きます。
経営層向けの伝え方の例:
「この投資は、2年以内に部門収益率を5%改善する可能性があります」
現場向けの伝え方の例:
「これまで10分かかっていた手作業が、ボタン1つで完了します」
伝え方を“誰に合わせて調整するか”は、CIOのコミュニケーション戦略の核心です。同じ話を全員にするのではなく、相手の視点に立って話す。その積み重ねが、CIOへの信頼と推進力を生み出します。
5. CIOが習得すべき、3つの伝達スキル
伝える力には、いくつもの要素がありますが、CIOに特に必要なのは次の3つです。
スキル | 説明 |
---|---|
ストーリーテリング | 施策や戦略を“物語”として語り、共感と理解を同時に得る技術。 |
ビジュアル化 | 複雑な概念を1枚の図や表に凝縮し、瞬時に伝える力。 |
リスニング&フィードバック | 相手の理解度を察知し、伝え方をリアルタイムで調整する柔軟さ。 |
これらのスキルは、プレゼンだけでなく、社内会議、資料作成、経営報告、すべての場面で差を生みます。技術と同様、コミュニケーションにも「磨くプロセス」が必要なのです。
6. 実践チェックリスト:「伝える力」を高める習慣
以下の項目を定期的にチェックすることで、CIOとしての伝える力は着実に向上していきます。
チェック項目 | 実践できているか |
---|---|
聴き手の関心軸で話を構成しているか | □ |
技術用語を業務インパクトに置き換えているか | □ |
複雑な概念を図解やストーリーで説明しているか | □ |
プレゼン後にフィードバックを求めているか | □ |
経営層・現場で伝え方を変えているか | □ |
相手に「行動させる」伝え方を意識しているか | □ |
毎月1回このチェックを行うだけでも、プレゼンや説明の質が格段に上がることを実感できるはずです。
7. まとめ:伝える力はCIOの“最大の武器”である
CIOが成果を上げるためには、戦略構築や技術理解だけでは足りません。その先にある「伝え方」が、構想を実行に変える鍵となります。
優れたCIOは、相手に伝わる言葉を選び、行動を引き出し、変化を起こします。それは決して派手なスキルではありませんが、最も実効性の高いリーダーシップの形です。
“伝える力”を磨くことは、自らの影響力を高め、経営とテクノロジーの橋渡しを担うCIOとしての本質に近づくことに他なりません。
CIOとしての影響力を高め、構想を“実行”へとつなげるためには、「伝える力」の磨き方に戦略と工夫が欠かせません。
もし「自社の状況に合った伝え方がわからない」「経営層や現場との橋渡しに悩んでいる」と感じたら、
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初回は壁打ち感覚でのご相談でも構いません。貴社のCIO機能が最大限発揮されるよう、丁寧に伴走いたします。