はじめに|“考える力”は育てられる
「言われていないので動けません」「どうすればいいか分かりません」——。 そんな言葉を、部下から聞いたことはありませんか?
その背景には、“考える力が足りない”のではなく、考える習慣や文化が根付いていないという、より構造的な課題が潜んでいる可能性があります。
もくじ
はじめに.“考える力”は育てられる
1.なぜ、自分で考えないのか?
2.“考える習慣”はこうして身につく
3.“考えない部下”を責める前に
4.考える力を引き出す関わり方
5.考える力が“チームの力”に変わるとき
おわりに.|“考える力”を育てるのは、関係と設計
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1.なぜ、自分で考えないのか?
「指示を待つ」「判断しない」部下の姿勢を見て、能力の問題だと感じることはありませんか?
しかし、その背景には「考えることがリスク」となる組織文化が存在していることが多いのです。過去に、
- 提案を否定された
- 判断を叱責された
- 自分の意見でトラブルになった
といった経験をした部下は、「考えずに従う方が安全だ」と学習します。
さらに、上司が正解を出しすぎると、部下は思考を手放し“正解待ち”に依存します。こうして、自ら考える力が弱まり、組織全体が「考えないことに慣れたチーム」へと変化してしまうのです。
2.“考える習慣”はこうして身につく
考える力は、才能ではなく習慣です。そして習慣は、日常の中での設計によって培われます。
最も基本的なアプローチは「問いを立てること」。上司からの問いかけが、部下の思考のスイッチになります。
- 「あなたならどう進めますか?」
- 「別の方法があるとすれば?」
- 「判断の根拠は何でしたか?」
これらの問いが繰り返されることで、“考える”という行動が習慣になります。
また、思考の余白を確保することも不可欠です。常にタスクに追われ、考える余裕がない状態では、習慣は育ちません。
組織として「問い」と「時間」の余白を意図的に設計することで、思考力は自然と定着していきます。
3.“考えない部下”を責める前に
「なぜ考えないのか?」という問いに対し、私たちは往々にして“本人の問題”として解釈してしまいがちです。
しかし、よく観察すると、その行動は組織や上司の関わり方に起因する場合がほとんどです。
- 判断をしたら否定された
- 提案しても聞き流された
- 小さなミスで責められた
こうした経験の積み重ねが、「自分の頭で考えること」への心理的コストを高め、“正解待ち”を助長します。
つまり、考えない部下を生み出しているのは、組織そのものなのです。
まずは「考えることを止めてしまった背景は何か?」という問いを、上司・マネージャー自身に向けてみましょう。
4.考える力を引き出す関わり方
考える力を引き出すには、関わり方の再設計が必要です。
1. 問いを渡す
答えを与えるのではなく、問いを共有することで、思考の起点が生まれます。
2. 判断を任せる
細かな指示よりも、小さな判断を委ねることで、主体的な思考を促します。
3. 答えを急がない
部下が問いに向き合う時間を確保すること。沈黙を“成長の時間”ととらえる視点が求められます。
4. 振り返りを仕組みにする
成功・失敗問わず、言語化して共有し、次に活かす。振り返りは“思考の可視化”のプロセスです。
このようなマネジメントの実践が、組織に“考える文化”を根づかせていきます。
5.考える力が“チームの力”に変わるとき
個人の思考が定着した先には、「チームとして思考する」フェーズがあります。
ここで鍵になるのは、思考が循環する仕組みを持つこと。
- 対話を促進する関係性:問い合い、補い合うことで思考の幅が広がる
- 問いを大事にする文化:答えより問いを重視する価値観の共有
- 挑戦と失敗への許容:安心感があってこそ、自発的な思考と行動が生まれる
- 見守るマネジメント:任せて、待つ。関わらないという支援もある
組織の構造と風土の両方にアプローチすることで、考える力は「個の力」から「組織の力」へと昇華していきます。
おわりに.“考える力”を育てるのは、関係と設計
「考える力を伸ばしたい」と思ったとき、研修やスキル教育に目を向けがちですが、
本質的には、
- 日々の関わり方
- 組織の設計思想
- 成長を許容する空気
これらをどう作るかにかかっています。
思考する文化は、偶然には生まれません。意図的に問いを増やし、任せ、待ち、振り返り、支える。その一つひとつの設計と実行が、“考える組織”を育てていくのです。
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